放課後支援員のお悩み相談室 子どもたちにとって「放課後」って、どんな時間ですか?

回答者:下浦 忠治

2019.09.19

子どもによって放課後の過ごし方はさまざまです。放課後児童クラブで過ごす子、おうちにいる子、習い事に行く子もいます。友達と遊んだり、一人で本を読んだり、ぼんやりしたりすることもあるでしょう。指導員や保護者は、「放課後」の時間をどう理解すればいいのでしょうか。

「放課後」は友達と関わり合う中で、意欲と主体性を育む時間です


撮影:村上宗一郎 撮影協力:東京学芸大学

自分がしたいことを、自由に選んで過ごせる時間

放課後は、文字通り「課題から放たれた後の時間」です。
子どもにしてみれば、朝起きて夜寝るまで大人から指示をされ、こなすべき課題を与えられることの連続だと、考えたり、判断したりしなくてすみます。言われるままに従っていればいいのは楽なのですが、そうすると自分から意欲を持って動き出すことができない「指示待ち人間」になってしまいます。

放課後は与えられた課題がなく、自分がしたいことを自由にして過ごせる時間。保護者から見ると、「遊んでばかりいないで宿題しなさい!」となりがちですが、遊びを通して自分で考えて判断し、実行していける大切な時間なのです。

他の子と一緒に遊びたいなら、「ドッジボールしようよ」「鬼ごっこしようよ」「一緒にぬり絵しない?」と、自分の思いを言葉にして伝える必要があります。また、問いかけられた子どもは自分で判断して「一緒にやる、やらない」を決められます。それが遊びの大事な部分です。その過程の中で、お互いの人となりを知り、認め合っていきます。ずっと学校の授業や塾の連続では、自分の思いを発する時間がありません。放課後は、友達と遊べる貴重な時間なのです。

それは友達との遊びの中で、自分から「やってみたい」という感情を醸成する時間でもあります。幸いにも放課後児童クラブは異年齢集団です。上の学年のお兄さん、お姉さんが遊んでいる姿に刺激されて、「自分にもできるかな?」と葛藤しながら、それを乗り越える意欲を発揮してチャレンジしていくことができます。そういう意欲は子ども同士が関わり合い、誘い合って遊んでいく中で育つものです。

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大人から言われた課題に従うだけでは、育たない力がある

大人から言われた課題に取り組むスタイルの学校の授業や塾、スポーツのクラブ活動などでは、子どもが「自由に自分から選べる」環境がありません。大人の価値に従って課題をこなし、そこの世界で評価されるばかりでは育めない力もあります。

今は「遊び」の価値が認められにくくなっていますが、遊びの中でこそ、自分が本当にしたいことや意欲、感情に気付くことができます。「思考力」「判断力」「協同する力」「自己有用感」なども、遊びの中で育まれていくものです。

なかでも友達が自分のことを遊び仲間として受け入れてくれ、認めてくれて、自分の存在をあてにしていてくれるという「自己有用感」は、人が成長していくためには極めて重要な部分です。子どもは大人から認められるよりも、子ども同士で認められることの方が、より大きな力になります。遊びに誘われる心地よさというのは、自分が友達からあてにされているという心地よさで、それは、子ども同士の関わりがあってこそ感じられるものです。

「遊ぶ」のも、「遊ばない」のも、自分で決められるように

一人遊びも含めて、遊びは自由な時間の中で行うことが基本です。「放課後児童クラブ運営指針」(厚生労働省)の言葉を借りれば、「遊びは、自発的、自主的に行われるものである」ということですね。もうひとつ大切なことは、「ノーと言える」ということです。「嫌なら一緒に遊ばない、参加しない」ことも、自分で決められるようになることが大事なのです。そういう育ちを大切にするためにも、放課後の時間は「遊び」を軸とした生活を営んでいきたいですね。

みなさんの放課後児童クラブでは、どのような時間を過ごしていますか?


(文・構成 生島典子)

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下浦 忠治

回答者プロフィール下浦 忠治 (しもうら・ちゅうじ)

1950年、奈良県生まれ。74年から東京都品川区で35年間、指導員として学童保育に携わる。2009年に退職。日本社会事業大学専門職大学院で「学童保育とソーシャルワーク」を開講。15年まで社会福祉士として東京都の児童相談所に勤務。現在は、東京成徳大学子ども学部で非常勤講師を務める。1都7県で放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に『どの子も笑顔で居られるために 学童保育と家族支援』(高文研)、『放課後の居場所を考える』(岩波ブックレット)など。