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<保護者向け>子育てのヒント 心と体をほぐす! 親子コミュニケーションのコツ

回答者:小野 學

2020.07.15

働く親にとって帰宅後は夕食の準備や片付けから明日の準備まで、息つく暇もないほど忙しいですよね。そんなときに限って、子どもがだらしなくしている様子にイライラして声を荒らげ、落ち込んでしまうことも・・・・・・。多くの小学校で悩める親子関係にアドバイスをしてきた東京学芸大学 特命准教授で公認心理師の小野學先生に聞きました。

 子どもは学校や学童で精いっぱい過ごしています 

親は仕事から帰っても、家事に子どもの世話にとやることがいっぱい。学童から帰ってきた子どもに「ダラダラしないで宿題して」「ちゃんと片付けて」などと言ってしまうことは、誰しもあることです。「あれもこれもやらなきゃ!」と焦り、仕事モードのままで、つい子どもにも効率を求めてしまうのかもしれませんね。でも家に帰るまでの日中、子どもがどのように過ごしているか想像したことはありますか。

小学校では勉強はもちろん、体づくりもしていて、低学年は大人の3倍以上も動き回っています。汗をびっしょりかいて、わかり合える同学年の友達との「あー楽しかった」という体験はとても大切。友達との間で生じるトラブルも、折り合いをつけていくことで社会性を育んでいます。学童は運営方針によって違いますが、主に外遊びや読書、宿題など、子どもが自分でやりたいことを自由に取り組みます。今や異年齢の友達と過ごせる貴重な場所で、さまざまな子どもや地域の大人とかかわりを持ちながら元気いっぱい活動しています。

「家庭」は心と体をたっぷり充電するところ

このように、子どもも学校や学童で精いっぱい過ごして疲れています。家に帰ってから親にあれこれ言われると、「わかってるよ!」と反発したくなるのも納得できます。小学生は体力も発達途中なので、帰宅後に少しぼーっとしたり、横になっていたりしたら、しばらく休ませてあげてください。親も、ときには「今日は手抜きDAY!」と割り切って、子どもと一緒に休むのもいいですね。

体だけでなく心の充電も大切です。家庭で簡単にできる、親子のコミュニケーションで大切にしたい3つのコツをご紹介します。

1.「あったかワード」を言う

「何でできないの」などのネガティブワードではなく、温かくなるようなポジティブワードを言うように心がけましょう。「大好きだよ」は子どもの心を溶かす鉄板ワード。ご飯を食べながら、就寝のときなどに「今日、どんなことあったの?」「ふんふん、そうなの」と、子どもの話を聞いてあげましょう。子どもは話すことで気持ちの整理ができていきます。

また、日常の子どもの様子を言葉にして伝えることも大切です。食事中に「おいしそうに食べてくれてうれしいな」。お風呂上りに「大きくなったね」など言葉をかけることで、子どもは「自分のことを見てくれている」と安心し、親とのきずなが深まっていきます。

2.「ぎゅーっとハグ」をする

子どもは、ぎゅーっと抱きしめられることで疲れた心がほぐれていきます。手をつなぎながら歩き、帰宅してから「大好きだよー」と言いながらハグするといいですね。ソファで一緒に座っているときや、就寝のときに足や背中をマッサージしたり、背中をトントンしたりするスキンシップも効果的です。


3.「やさしくフォロー」するまなざし

学校や学童で何かトラブルがある様子が垣間見えたときは、「大丈夫だよ」「心配いらないよ」と、安心できる言葉をかけてあげましょう。問題が起きたときは、子どもが成長するチャンスです。親が「~のせいで」などと批判的になったり、頭ごなしにしかりつけたり、過剰に保護したりすることは控え、問題解決のために、子どもと一緒に考えていく姿勢が大切です。親は「何があっても大丈夫だよ」とどっしり構え、やさしいまなざしを送りましょう。

 

たっぷり甘えることで、明日への活力がわいてくる

家事や仕事に集中していると、子どもが話しかけてきても「後でね」と言ったり、悪気がなくても結果的に無視してしまったりすることがあります。ある小学生が私にこう言いました。「『後でね』『今度ね』ってママやパパに言われたけど、7日間待っても答えてくれない。『嘘つき!』と思ってしまうんだ」。
このようなことが続くと、子どもは「自分より他のことが大事なんだ」「どうせ話を聞いてくれない」と心を閉ざしてしまいます。どうしても忙しいときは「今、手が離せないから、10数えるまで待ってね」など、終わりの見通しを伝え、なるべく早くこたえてあげたいですね。

家はゆっくり休む場です。親に安心して甘えられることで疲れた心と体が充電され、「いろいろあるけど、がんばろう」と明日への活力がわいてきます。とはいえ、初めから完璧な親などいません。ぜひ「親子コミュニケーション3つのコツ」を少しずつ試してみてください。子どもだけでなく、親の心もほぐれて親子関係がぐっと良くなりますよ。

(イラスト ふじわらかずえ、文・構成 米原晶子)


「親子コミュニケーションのコツ」をわかりやすくまとめた、ダイジェスト版 
→【たのしーと壁新聞】2020年夏号(親子コミュニケーションのコツ)

 

※次回は11月中旬に更新予定です

小野 學

回答者プロフィール小野 學 (おの・さとる)

東京学芸大学 「子どもの社会資源格差を乗り越える 教育協働システムに関するコンソーシアム型研究プロジェクト」 特命准教授公認心理師、臨床発達心理士、特別支援教育士。教師として川崎市の小学校に勤務後、筑波大学の心理発達教育相談室へ。親子関係に悩みを持つ多くの家庭の相談を受ける。現在は全国の小学校への教育支援に携わる。