たのしーと制作者インタビュー「遊びながら学ぼう!」 第4回 東京学芸大学 児童・生徒支援連携コンソーシアム特命助教 田嶌大樹さん

2020.08.18

「放課後たのしーと」で「体あそび」を監修している、東京学芸大学 児童・生徒支援連携コンソーシアム特命助教の田嶌大樹さん。東京学芸大学の放課後児童クラブの運営にも関わっています。運動あそびと子どもの能力について、そして「withコロナ」下での「体あそび」について聞きました。


撮影:品田裕美

「たのしーと」にある「体あそび」の特徴を教えてください

学童の基本的な活動は遊びです。学童は学校のようなカリキュラムがない分、子どもがより自由で主体的に活動できる場です。そのような場所では、子どもが「遊びの世界に没頭できる」ことが何より重要です。「この遊びをやれば〇〇が身につく」といった教育の手段として遊びを用いるのではなく、遊ぶこと自体を子どもたちが存分に味わえるようにしましょう。

「放課後たのしーと」では、4つのカテゴリーを設定し、体を使ったさまざまな遊びを体験できるようにしています。

「競争あそび」:ゲームなどで他者と競いあったり、自身の能力を試したりしながら行う遊び。
「運あそび」:「じゃんけん」のように、自身の能力は関係なく運試しを楽しむ遊び。
「模倣(まね)・リズムあそび」:普段の自分とは違う「何か」になりきったり、リズムに乗ったりする遊び。
「めまい(脱力・感覚)あそび」:日常では体験しないような身体感覚を味わう遊び。

これら4つの要素を多様な遊びのなかでバランスよく経験することで、普段の体の動かし方だけでは得られない、未知なる身体感覚に出合えます。楽しい思いや達成感だけではなく、ゲームに負けるといった「うまくいかないくやしい思い」、体をイメージ通りに動かせない「思い通りにならない感覚」など、自分のダメなところ、思い通りにいかない感覚も経験できます。この「うまくいかないこと」をおもしろがれるのは、遊びの世界だからこそ。

このような経験を繰り返すことで、子どもは次第に自分の体や気持ちとの向き合い方を学んでいきます。子どものうちに遊びを通し、自分自身のうまくできるところ、できないところを知り、他者との違いを認め合える人間関係が築けることを期待しています。

支援員が遊びをリードするとき、気をつけるポイントはありますか?

子どもに「遊びを与え、指導する」のではなく、「一緒に遊ぶ、一緒に遊びをつくる」ことを意識するといいでしょう。おもしろい遊びに出合うと、子どもは遊びにのめり込み、遊びをつくり変えることもあります。そうした主体的な活動がどんどん生まれるように、支援員自身も一緒におもしろがり、「遊び心」を持って子どもと関わってください。

「放課後たのしーと」は、「大人も子どもも一緒に」という関係性を自然につくり出してくれるツールです。ぜひ、子どもと一緒に「どうやって遊ぶ?」と言いながら、シートを見てください。シートに書いてあるルールにこだわる必要はありません。シートの遊びをきっかけに遊びが変化したり、広がったり、深まっていったりすることで遊びはますます盛り上がっていきます。

好きな遊びに没頭する中で、子どもはさまざまな力を身につけていきます。イヤイヤやらされる遊びや宿題の何十倍、何百倍も学ぶスピードが速いように思います(笑)。学童では、そんな子どものいきいきした姿がたくさん見られると思いますので、支援員のみなさんもそこに注目してほしいですね。


密にならずにできる「体あそび」はありますか?

新型コロナウイルス感染予防の観点から、今は「ソーシャルディスタンス」を保つ社会生活が求められています。スポーツや運動遊びは、やり方によっては身体接触や飛沫拡散が生じる可能性があるので、学童でも活動しづらい状況にあるでしょう。しかし、むしろそうした制限のある状況を「遊びの条件」として肯定的に捉えることもできると思っています。

例えば、サッカーは「手でボールを扱わない」という制限をプレーイヤーたちに課しているところにおもしろさがあります。スポーツや運動遊びには「制限をルールにして遊ぶからこそおもしろい」という側面がもともとあるのです。そう考えると、「お互いに身体接触をしない」ことをルールとして、新たに遊びに組み込んでいくこともできるはずです。

このように、遊びの世界から日常の閉塞感を打破していこうとする発想もまた、「遊び心」があればこそ。確かに今はできる遊びも限定されますが、子どものうちからいろいろな遊びを経験することで、どんな困難な状況でも「豊かにおもしろがれる人」になってもらいたいと思っています。

(文・構成 米原晶子)


※「放課後たのしーと」で紹介している「体あそび」の中から、ソーシャルディスタンスを保ちながらできる遊びをピックアップしました。

くわしくは、こちらをご確認ください。

 

プロフィール 田嶌 大樹(たじま ひろき)

東京学芸大学 児童・生徒支援連携コンソーシアム特命助教
専門は「あそび」を核にしたスポーツ・教育実践研究。現在は、放課後児童クラブにおける遊びの研究、企業や地域の大人と大学生・子どもを巻き込んだ学校外教育フィールドの開発、運動遊びを通じて子どもの能力を高めるプログラムの開発などに取り組む。学校教員研修や放課後児童クラブ支援員向け講座などの講師も務め、その活動は多岐にわたる。
著書『子どもの貧困とチームアプローチ “見えない” “見えにくい”を乗り越えるために』(共著・松田恵示監修/書肆クラルテ)では、大学生が社会課題の解決を目指して教育実践をしながら学ぶ「サービスラーニング」について論じている。

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