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支援員のお悩み相談室 学童にはさまざまなタイプの子どもがいます。子ども一人ひとりを理解するために、どのようなことを心がければいいでしょうか?

回答者:河野伸枝

2021.02.10

学童(放課後児童クラブ)には、さまざまなタイプの子どもが在籍していて、生活を共にするなかでいろいろなことが起こります。そのたびに、一人ひとりをきちんと理解してあげたいと思いますが、支援員として子どもを理解する上でどのようなことを心がけて接すればいいでしょうか?

決めつけや思い込みを捨てて、「あなたのことをわかりたいと思っている」という姿勢で接しましょう。

Hakase_/iStock / Getty Images Plus

 

表に出る言動だけで、子どもの内面は理解できない

ひと言で「子どもを理解する」といっても、小学校低学年の子どもはまだまだ未熟で、自分の思いをうまく言葉で表現することができません。思いとは裏腹な言動で表すこともあるので、内面を理解できないと表面的な言動に振り回されてしいます。日々の言動だけで、「乱暴な子だ」などと最初にとらわれた見方をしてしまうと、その子の別の一面や本当の気持ちに気づけなかったり、見落としたりしてしまいます。まずは決めつけや思い込みを捨てて、「しっかりこの子を知ろう」というアンテナを常に張ることが大切です。

ささいなことで興奮しやすく他者を攻撃する子に、落ち着きを取り戻したタイミングで「何かイヤなことがあったの?」と尋ねると、「本当はあの子と遊びたかったの」など、友だちとつながりたい気持ちが見えてくることもあります。また、言動の背景に学校や家庭への不安感や困りごとを抱えていることもあります。子どもを理解する足掛かりとしては、まずはその子の家庭や学校生活、友達関係、これまでの成育歴などがヒントになるでしょう。

しかし、成育歴だけで判断できるものではなく、また長期間見たからといって、その子のことがわかるわけでもありません。「あの子のことはわかっている」と決めつけず、日々アップデートする相手を知ろうとする努力が必要です。かかわっていくなかで少しずつ別の一面が見えてくることもあるので、その時々で「その子がどんなことに胸を躍らせ」「どんなことに悲しみ」「痛みを抱えていないか」などの変化に気づき、子どもを多面的に捉えていく姿勢が求められます。

「あなたのことをわかりたいと思ってここにいる」と伝えること

私が勤務している学童に以前通っていたYくんは両足が義足で手も変形していました。好奇心旺盛でみんなと同じことをしたいけれど、なかなか自分の思い通りにならず、かんしゃくを起こすことがしばしばありました。

あるとき虫捕りに出かけて、木に虫がいないか調べるためにスコップを枝に投げて虫を落とそうとしたところ、Yくんが逃げ遅れて落ちてきたスコップに当たってしまいました。Yくんは痛さとくやしさで周りの子にかみついたり、殴りつけたりして暴れ始めました。

「足がない俺の気持ちがお前にわかるわけがない。お前も足を切ってみろ」と叫ぶYくんに、私は「Yくんと同じにはなれないけれど、Yくんをわかりたいと思ってここにいるんだよ」と言いました。するとYくんは、保育園のときに友達にいじめられていたことを話し始めました。「そんなふうにいろんなつらさを乗り越えてここにいるんだね」と私が言うと、Yくんは自分の気持ちを受け止めてもらえたと感じたのでしょう。暴れていた自分の行動を振り返って、「かみついたり殴ったりしてしまったお友達に謝りたい」と言ったのです。

私はこの一件で、「私はあなたのことをわかりたい」という気持ちで子どもの話に耳を傾けることが、子どもが心を開いてくれることにつながると気づきました。

撮影:品田裕美 撮影協力:東京学芸大学

話を聞く、行動を見る。かかわりから変化に気づく

子どもが「今日はいつもと様子が違う」と思うときには、「何かあった?」と声をかけます。「うるせー!」と返されるなど、子どもが自分の気持ちを伝える余裕がないときもあります。そんなときは、同じクラスの子に聞いてみると、おおよその原因がわかってきて、「そういうことがあれば、ああなるよね」と理解できます。

無理に「話して!」と聞きだそうとしたり、逆に「すごく心配」という雰囲気を出し過ぎたりすると、子どもは話しにくくなり、余計に心を閉ざしてしまうことがあります。難しいことですが、負担にならないようにさりげなく接しながら、子どもたちが話しやすい空気感を持っておくことが必要です。

「子どもの話を聞き」「行動を見て」「一緒に考える」といった日々のかかわりのなかで、常に子どもに意識を向けることで、普段とは違うちょっとした変化に気づけるようになります。それにさりげなく寄り添うことで「気づいてもらえた」「自分のことをわかってもらえている」という安心感につながり、子どもの信頼を得ることにつながります。それが、子どもへの理解につながっていくのです。


(文・構成 生島典子)

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河野伸枝

回答者プロフィール河野伸枝  (こうの・のぶえ)

1959 年、鹿児島県生まれ。幼稚園教諭を経て、90 年に埼玉県原市場学童保育の支援員となる。支援員歴は30 年。これまでに、全国学童保育連絡協議会の副会長、埼玉県学童保育連絡協議会の副会長などを歴任。現在は、一般社団法人飯能市学童クラブの会の理事を務める。2015 年から始まった放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に、『わたしは学童保育指導員―子どもの心に寄り添い、働く親を支えて』(高文研)、『子どもも親もつなぐ学童保育クラブ通信』(高文研)など。