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たのしーと制作者インタビュー「遊びながら学ぼう!」 第10回 東京学芸大学 教育学部 健康・スポーツ科学講座 鈴木聡研究室

2021.04.12

さまざまな特性を持った子どもが一緒に楽しめるスポーツ「ゆるスポDeCö(でこ)」を、学童向けにアレンジした新シリーズがスタートします。開発に携わった東京学芸大学 教授・鈴木聡先生と、同大学大学院修了の鈴木真央さんにお話を伺いました。

写真左/鈴木真央さん、右/鈴木聡さん(撮影:たのしーと編集部)

「ゆるスポDeCö(でこ)」を制作した経緯を教えてください

〈鈴木聡さん:以下、鈴木先生〉
「世界ゆるスポーツ協会」という、“老若男女健障を問わず”誰もが楽しめるスポーツをつくる団体があります。運動能力の高い人だけでなく、運動が苦手な人が活躍でき、勝っても負けても笑い合えて、見ている人も楽しめるという、ユニバーサルデザインとしてのスポーツが理念です。いろいろな団体がスポーツを開発していますが、私たちの研究室に求められたのは、発達障がいのある子どもが楽しめるスポーツでした。

発達障がいがある子もそうでない子も、みんなが一緒に遊べ、特性のある子どもへの理解も得られるスポーツを目指して開発したのが「ゆるスポDeCö」。「DeCö」は、 Developmental disability (発達障がい)の「de」と、collaboration(みんなで)の「co」を組み合わせたもので、そこに「デコボコ」という意味も込めました。「ö」はドイツ語の表記で、笑っている顔みたいでかわいくて。特に意味はありません(笑)。

「ばいきんグー」(ゆるスポDeCöは、4月より月1回ずつ配信予定)

どのような点に注目して遊びを開発しましたか?

〈鈴木先生〉
まず特別支援を専門に研究している先生から発達障がいの子どもの特性を聞くことから始めました。発達障がいの子は、体を動かすこと自体は楽しめるのですが、ルールが苦手で遊びから遠ざかってしまう傾向があります。そこでスポーツのルールという「壁」、運動能力の高いほうが有利だという「壁」をぶっ壊そうと考えました。例えば、普通のリレーは足の速い人が勝ちますが、足の遅い人が勝つようにアレンジするというふうに、発想を転換するのです。

研究室のゼミ生で開発チームをつくり、スポーツ開発を始めました。じっと座っているのが苦手な子の特性を生かした遊びが「ようかいランドリー」(8月配信予定)。「片付けが苦手な子」は「散らかすのが得意」と考えて、「誰かが苦手なことは、誰かが得意」と捉え、それぞれを対決させた遊びが「せいそう寺」(12月配信予定)。得意なことを思いっきりできるだけでなく、遊びで立場を変えることで、片付けたいのに散らかってしまう、じっとしていたいのにできない、という「もどかしさ」も体験することができます。

「ゆるスポDeCö」の遊びをする子どもたちの反応は?

〈鈴木真央さん:以下、真央さん〉
公園で催したイベントでは、名前も聞いたこともないような新しい遊びが人気でした。「きびーっす」(2022年2月配信予定)は段ボールで手作りした鬼の口に目がけてボールを投げるのですが、道具を見て「いったい何だろう?」と興味を持ってくれました。仕掛けなどのビジュアル的な楽しさが目を引いたようです。「ゆるスポDeCö」は、遊びにストーリーがあるのも特徴なのですが、「君たちは水族館のアシカだよ」と言うと、「えー!」と言いながらも、すぐその世界観に入り込みます。ルールを淡々と説明するより「アシカになって皿を運ぼう!」と言う方が、何をするかイメージしやすいようです。

〈鈴木先生〉
「カオーリング」(7月配信予定)は、紙皿で顔を作る遊びですが、ちゃんとした顔に整えたい子もいれば、紙皿を投げたり、ほうきで整えたりという行為自体が楽しい子もいて。それぞれのこだわりや、特性を遊びで生かしてあげられるといいですね。「遊びたくない」という子も見ているだけでも楽しそうで、「みんなと遊ばない日があってもいい」と感じられる貴重な体験でした。

「カオーリング」(7月配信予定)

運動が苦手という子には、どういうアプローチをすればいいでしょうか?

〈真央さん〉
大人からすると、運動が苦手な子やルールを守らない子は、目立つし異質な存在に見えるでしょう。でも、その子は「やりたくてもできない」というもどかしさを抱えているのかもしれません。できないことは決して悪いことではないので、置き去りにせず、できない子が目立たない遊びを選んであげたり、遊びのルールをアレンジしてあげたり、「子どもたちにスポーツを合わせる」ことが大事だと思います。

例えば、「きびーっす」はみんなが夢中でボールを投げるので、うまく投げられない子がいてもわかりません。逆に活躍した人もわからないのですが(笑)。参加する人数が多いと、負けても、うまくできなくても目立たないという利点があります。

〈鈴木先生〉
遊びのときは、スポーツにありがちな厳密性をあまり求め過ぎない方がいいですね。「スタート!」というときに、勇んで少しフライングした子に「ストップ。早いでしょ!」と指導を始めると、遊びの雰囲気が一気に壊れてしまいます。ある程度のグレーゾーンを認めてほしいです。

「ゆるスポDeCö」を楽しむために、大人に気を付けてほしいことは?

〈真央さん〉
子どもの自主性を尊重したいので、「やりたい!」とワクワクするような声かけをしましょう。子どもは自分の世界にないことに興味がわくので、「今日は『はこびまショー』をやるよ。どんな遊びだと思う?」と問いかけると、「なにそれー!」と言いながら盛り上がります。

遊びが終わったら、すぐポジティブな声かけをしてください。「なんで負けたんだろう」と深掘りしていくと、勝敗に対する意識が強くなってしまいます。また、できない人に「おまえがミスしたから悪い」と、他の人が攻撃の的にするのは一番おもしろくないし、言った方も後でつまらなくなります。マイナスな感情を引きずらず、「負けちゃったけど楽しかったね!」「残念だったね。もう1回やろうか」「おもしろくなかった? じゃあ違う遊びしよう」など、気持ちを切り替える声かけを大切にしてほしいです。

「ゆるスポDeCö」はコチラ

※2021年4月より、11コンテンツを月1で配信予定

(文・構成 米原晶子)


プロフィール 

鈴木 聡(すずき・さとし) ※写真右
東京学芸大学 教育学部 健康・スポーツ科学講座 博士(教育学)教授
都内公立小学校、東京学芸大学附属世田谷小学校の教諭を経て、2012年から現職。専門は体育科教育学、教育心理学など。令和元年~3年度「スポーツ庁小学校体育(運動領域)指導の手引」作成委員。主な共著に『コアカリキュラムで学ぶ 教育心理学』(培風館)、『小学校体育はじめの一歩 主体的・対話的で深い学びを考える』(光文書院)など。

鈴木真央(すずき・まさひろ) ※写真左
東京学芸大学「ゆるスポDeCö」開発チームリーダー
東京学芸大学大学院 教育学研究科修了。大学院では体育科教育学を専攻。修士論文のテーマは、「水泳指導における小学校教師の『目のつけどころ』」について。「ゆるスポDeCö」制作では、開発チームのリーダーを務める。2021年4月から栃木県の公立小学校教諭。