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支援員のお悩み相談室 4月に入所してくる新1年生。どんなところに気をつけて接すればいいでしょうか?

回答者:河野伸枝

2021.04.12

4月は新1年生を受け入れる時期です。今までの保育園や幼稚園とは違う生活をする学童で、さまざまな個性を持つ子どもたちと接するときに、改めて気をつけるポイントを教えてください。

4月は、子どもも保護者も支援員も、誰もが「はじめまして」の時期で緊張しています。「ゆっくり、ゆっくり」を心がけて、新しい環境になじめるように見守りましょう。

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無理強いすると、緊張感が増す

4月から学童保育(放課後児童クラブ)に通い始める新1年生は、小学校だけでも疲れているのに、家に帰らずに過ごす学童という場所に対して、大人が想像する以上に大きな不安を抱えています。学童保育は、子どもが行きたくて来る場所ではなく、保護者の都合で通うもの。最初はなじめなくて当たり前です。新しい場所と知らない人に、とても緊張していることを前提に考えましょう。

私が過去に経験した例では、入所時の自己紹介でもお母さんの陰から出てこられないSちゃんがいました。こんなときも、子どもの恐怖感や緊張感をあおらないよう、無理強いするようなことはしません。Sちゃんが初めて学童に来た日、「ドキドキしたでしょう?」と声をかけたら、「うん」とうなずいてくれましたが、お弁当を食べる場所を迷っている様子にベテラン支援員さんが「向こう、空いているよ」と手を取ると、パッとその手を振り払いました。

慣れていない大人に急に体に触れられると緊張を強めてしまう子どももいます。私は上の学年の子どもたちに、「困っている1年生に気づいたら、声をかけてあげてね」と声かけをお願いしました。すると、2年生の子が、「ここにおいでよ」と誘ってくれ、Sちゃんはその隣でお弁当を食べ始めました。こういうふうに、子ども同士がつながれるよう配慮することも必要です。

次の日はまた別の子に、「Sちゃんが緊張して、どこでお弁当を食べるか迷っているみたい」と言うと、その子は「こっちに座りなよ」と声をかけてくれ、Sちゃんはその隣に座ることができました。そこに私もスッと入っていき、「今日は学校どうだった?」と話しかけます。すると、「今日はね、点々の三角をなぞるお勉強をしたよ」など、たわいないことを話してくれるようになりました。

そんなふうに1日目、2日目と繰り返したら、3日目には1年生女子の遊びの輪の端っこに座っているSちゃんの姿がありました。ゆっくりと周囲を確かめながらつながろうとしていることがわかりました。お母さんにもそうした様子を伝え、「大丈夫よ」と話しました。保護者にも、初めての場所に預ける不安を安心に変えてもらえるよう、毎日の様子を伝えるのも大事なことです。

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学童でお母さんを笑顔にして帰したい

入所してくる1人ひとりの子どもと接するうえで、その個性や家庭についてあらかじめ知っておくことも大切です。通常、保育園や幼稚園から学童に子どもの特徴などの情報が提供されることはないので、情報を得たいときはこちらから聞きに行くようにしています。厚生労働省が策定した「放課後児童クラブ運営指針」の中でも、「新1年生については、子どもの発達と生活の連続性を保障するために、保育所、幼稚園等と子どもの状況について情報交換や情報共有を行う」ことが大事だと書かれています。特に発達障がいのある子の場合は、それまでの成長過程の様子などを確認しておきます。学童への入所前に書いてもらう「児童調査書」でも、ある程度の家庭の事情が把握できるので、事前によく目を通しておくようにします。

Rちゃんのお母さんが3人の子を1人で育てていることを知ったのも児童調査書からです。入所初日にお母さんに「1人で大変じゃないですか?」と声をかけると、「もういっぱいいっぱいです」と答えたお母さんの表情からしんどさが伝わってきました。「1人で抱えないで、困ったことがあったら何でも話してね」と伝えると、お母さんは「ありがとうございます」と安堵の表情を浮かべました。それからは、折に触れて声をかけるようにしました。

最初のころ、不安で学童で泣くことが多かったRちゃんに「おかえり。今日も泣くの~?」と声をかけると「コーノさん、今日も泣くかも~」と答えて笑いました。お迎えのときにわが子のそんな様子を聞いたお母さんは、「学童でも自分を出せているんですね」と笑っていました。

私は「お迎えのとき、保護者のみなさんを笑顔にして帰そう」と心に決めて接するようにしています。学童でのわが子の様子を聞いて笑ってから、「さぁ、帰ろう」という気持ちになってほしいのです。それが、仕事で疲れている親御さんの家庭での子育ての力になると信じているからです。

4月は、子どもも保護者も緊張していますが、支援員もまた、子どもを怖がらせないようにと緊張するものです。すぐに学童になじんでワーッと遊び始める子もいれば、慣れるのに時間がかかる子もいます。焦らずゆっくりつながっていけばいいということを私自身、いつも自分に言い聞かせながら、子どもたちに関わっています。そして子どもだけでなく、「ママの笑顔を支えたい」という思いも忘れずに、気持ちも新たにお子さんや保護者に接してほしいと思います。


(文・構成 生島典子)

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河野伸枝

回答者プロフィール河野伸枝  (こうの・のぶえ)

1959 年、鹿児島県生まれ。幼稚園教諭を経て、90 年に埼玉県原市場学童保育の支援員となる。支援員歴は30 年。これまでに、全国学童保育連絡協議会の副会長、埼玉県学童保育連絡協議会の副会長などを歴任。現在は、一般社団法人飯能市学童クラブの会の理事を務める。2015 年から始まった放課後児童支援員認定資格研修の講師も担当。著書に、『わたしは学童保育指導員―子どもの心に寄り添い、働く親を支えて』(高文研)、『子どもも親もつなぐ学童保育クラブ通信』(高文研)など。