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たのしーと制作者インタビュー「遊びながら学ぼう!」 第15回 「放課後たのしーと」総監修 東京学芸大学芸術・スポーツ科学系 准教授 正木賢一さん

2022.03.31

2019年からサービスを開始した「すき!がみつかる 放課後たのしーと」の総監修を務める、東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系准教授の正木賢一さん。「たのしーと」の名付け親であり、ロゴのデザイン制作も担当。「あそびは最高の学び」をコンセプトに掲げ、企画段階から放課後の子ども向けのコンテンツ制作にご協力いただきました。子どもにとって「遊び」とは? 「たのしーと」への思いとともに聞きました。

撮影:村上宗一郎

「たのしーと」は、「あそびは最高の学び」がコンセプトです。なぜ「遊び」が子どもの「学び」につながるのでしょうか?

「遊び」と「学び」は相反するイメージがあって、大人からすると「遊んでいるだけでしょ」と思うかもしれませんが、「遊び」と「学び」は別ものではないんです。子どもは本質的に遊ぶことが大好きで、放っておけば自然に遊びだします。遊びながら「楽しい!」と思うことのなかから興味や関心が生まれ、それがやがて学びに発展していくのです。

「思考力」や「判断力」も、教えられて身に付くものではなく、遊びながら自然と体を動かしたり、いろいろなものに触れたり、会話をしたりしながら「これは何なんだろう」「どう動けばいいかな」と自発的に育まれていきます。外からいくらいいものを与えても、本人がおもしろいと思える心が芽生えない限り、学びにはつながりません。「遊びあってこその学び」だということを、みんなにもっと実感してほしいですね。

撮影:品田裕美

「たのしーと」には、いろいろな遊びのジャンルがあります。制作に込めた思いとは?

「放課後の子どもたちのために、遊びを開発したい」という企画を編集部から聞いたとき、最初にひらめいたのは「遊びの“おやつ”」という位置づけです。おやつは子どもにとって楽しい時間です。メインディッシュではないけれど、「今日のおやつは何かな」とわくわくするし、友達と一緒に食べながら会話も弾みます。

そこで、「たのしーと」に「言葉」「数・図形」「工作」「体あそび」といった、さまざまな遊びのジャンルを設け、「おやつの時間のように楽しもう!」という仕立てにしました。従来のドリルや学校の教材のように、トレーニングのために与えるものではなく、成果を出させる義務感も必要ありません。「たのしーと」のちょっとしたお題をきっかけに、子どもたちの遊び心を刺激し、「もっとここを調べたい」「友達ともっと別の遊びをしたい」と発展していけるのが魅力です。

正木先生デザインの「放課後たのしーと」のロゴ

子どもが自分の「好き」を見つけるために大切なこととは?

自分が好きなものを客観的に見るには、子どもは未熟です。「何が好き?」と聞かれて、「これが好き!」と答えるのは簡単なことではありません。でも、遊びながら「楽しい!」という気持ちは自然に出てくるので、それを言葉にしたり、人と共有したりしていくうちに、だんだん好きなことに気づいていきます。「何かに夢中になった」という経験が、「好き」を見つける道しるべになるのです。

子どもが「好き」を見つける過程で、大人が「こうした方がいい」などと余計な解釈を加えると、子どもは興味をなくす可能性があります。大人は子どもの楽しそうに熱中している姿を見守り、その時間を担保できる環境づくりを心がけてください。

親は子どもにごはんを作るとき、「嫌いなものは無理して食べなくていい、いつか好きになるかもしれない」と、いろんなものを食べさせます。同じように、何が好きかを見つけるためには、いろいろな経験をしつつ、「苦手なものがあって当然」だという捉え方も必要です。

撮影:村上宗一郎

「たのしーと」という名前は、「楽しい」と「シート」を組み合わせたダジャレ。「ダジャレは大変クリエーティブなんです(笑)。言葉遊びで人を笑わせ、コミュニケーションを豊かにしていくもの。『たのしーと』は、ダジャレのように軽やかで、楽しい余白がいっぱいです」(正木先生)

「たのしーと」に取り組むとき、より楽しむためのポイントは?

「子どものために」と思っていると、大人にも子どもにも負荷がかかります。「指導しなければ」という義務感をいったん横に置いて、大人も「楽しいね!」と言いながら一緒に遊んでみてください。だんだん子ども心が蘇ってくるでしょう。その方が子どもにとっても幸せです。「大人も楽しんでいる」と子どもが実感できれば、お互いに響き合う「遊び仲間」のような認識が生まれ、そこから新しい遊びや学びが広がっていきます。

子どもは、大人が思いつかないようなおもしろいことを書き込んでいたり、行動したりすることがあるので、ぜひ表現したものにも注目してみてください。子どもが何を考え、何を思って行動しているのかを、カルテのように「たのしーと」から読みとることもできるでしょう。「たのしーと」は、子どもと大人をつなぐツールとして機能する可能性があるのです。

撮影:村上宗一郎

子どもを取り巻く学校、家庭、地域という環境の中で、学童に期待される可能性とは?

多くの人に出会い、いろいろなタイプの大人からアドバイスをもらったり、叱られたりする人間関係は、子どもの育ちにとても大切です。学童で出会う、学校の先生でもなく、親でもないという第三者的な大人の存在感は大きいですね。大人のおもしろい部分に触れることができ、「斜めの関係性」を築けるのが学童のメリットです。

学童に集まってくる子ども同士の仲間意識も独特です。学校は集団で一緒に学ぶことが大前提で、塾や習い事は個人のレベルで何かをスキルアップしていく場。一方、学童は異年齢の子ども同士が、遊びながら関係性を築き上げていきます。兄妹姉妹が少なく孤立しがちな現代において、学童は多様な遊びと学びのプラットフォームとして、また、子ども同士や大人との架け橋になる貴重な場として機能していると感じます。

正木先生のインタビューも! 「すき!がみつかる 放課後たのしーと」ご紹介動画

(文・構成/米原晶子 撮影協力/東京学芸大学こども未来研究所)


プロフィール 正木 賢一(まさい・けんいち)

東京学芸大学 芸術・スポーツ科学系准教授
アートディレクター
「すき!がみつかる 放課後たのしーと」の総監修・共同開発。専門はグラフィックデザイン・情報デザイン。美術・デザイン教育における「ビジュアルコミュニケーション」について研究。企業キャラクターやWEBデザインを多く手がける。
公式サイト http://www.u-gakugei.ac.jp/~kenichi/