支援員のお悩み相談室 第37回 学童保育に来ると攻撃的になる子がいて、注意をしても聞きません。支援員も手を焼いている状態です。

回答者:小野 さとみ

2022.08.30

学童保育に来ると大声を出して走り回ったり、支援員の机にあるものを取って投げたり、やりたい放題の子どもがいます。注意しても響かず、話を聞こうとしても逃げるばかりで会話になりません。支援員は毎日なめられている状態です。どうすればよいでしょうか。(大阪府・支援員歴4~9年目)

なぜ攻撃的な行動をとるのかを考え、その子の興味のあることを知ることから。

 

ルールや決まりが苦しくて大人から逃げている可能性も

その子は、毎日の生活の中で「学童保育に来るとイライラして攻撃的な行動になる」という気持ちのスイッチになっているのかもしれません。学童保育に着くと気持ちのバランスが崩れて、「騒いじゃおう!」となる感じです。

学童保育は、学校から「ただいま」と帰ってくる子どもの居場所であり、生活の場です。学校では、学習活動を中心にがんばっていることが多いので、多くの子が「ここでは自由に気楽に過ごしたい」と思っています。しかし、学童保育も集団で生活をする場です。みんなが気持ちよく過ごすためのルールや決まりごとがあり、自分の好きなことだけではなく、やらなければならないこともあります。

そのような中で「めんどくさい。イヤだ!」「僕は今、いろいろなことを言われるのが苦しいんだ!」という気持ちの表現のひとつとして、乱暴で攻撃的な行為で示すことがあります。そういう行動で大人を試しているとも言えます。

乱暴なことをするので、注意をしようとすると「逃げる」ということは、本人は「注意されたくない」「話を聞きたくない」「今は違うことをしたい」と思っているのでしょう。子どもが逃げると、支援員は追いかけて注意をしますよね。話をするためにつかまえることもあるかもしれません。大人に注意をされたり、つかまえられたりすることで子どもはさらに気持ちがざわつき、「ものを取って投げる」など攻撃的な行為の繰り返しになってしまいます。

その子が「何に対してイライラして攻撃的になっているのか」「なぜそんな気持ちになっているのか」を見てあげなくては解決しません。まだ小学生ですから、「疲れているから」という単純な理由もあり得ます。大人をなめているのではなく、大人の対応から逃げているのです。その逃げ方が攻撃的に表現されているのでしょう。

 

子どもからの注目行動の場合、違うアピールの仕方を

「自分を見てほしい」「自分にかまってほしい」という注目行動の可能性もあります。子どもがいけないことをすると、大人は注意をしに飛んできます。子どもたちが大勢いる中で奇声をあげて走り回れば、「注意」という形で支援員が自分のほうを向いて関わってくれるからです。

「どうしたら、そこにいる支援員と子ども全員が自分に注目してくれるか」を考えて、注目されるために乱暴な行為をして、それがどんどんエスカレートしていくことがあります。そういうときは、その行動に振り回されず、「違う方法で自分をアピールできる」ように導いていきましょう。

普段の何げない関わりの中で、その子が好きなことや、したいこと、興味のあることを一緒に見つけていくのです。「悪いことでは、かまってあげられないけれど、興味のあることなら応援するよ。好きなことをやって楽しもうよ」と伝えながら一緒に過ごしてみてください。その子の悪いところではなく、いい部分を見つけていくように関わっていくほうがお互いに笑顔で過ごせますね。

落ち着いているときにこそ、少しずつ関係性をつくる努力を

今は子どもが先に行動を起こし、ことが起きてから後追いで支援員が対応している状態です。子どもにとってはいつも注意されるばかりで、イライラは解消されません。つまらないからムシャクシャして、もっと行動が荒々しくなるという悪循環が繰り返されてしまいます。歯車をかけかえるためには、落ち着いて過ごしているときがポイントです。その子が好きなことは何なのかを探るため、こちらから少しずつ関わっていくようにしてみましょう。職員みんなでその子の様子を観察して、情報共有しながらいいところを見つけていくことが大切です。

小さい子に優しい姿を見せ、弟や妹をかわいがっていたり、下級生の面倒を見たりする場面があればほめるきっかけになります。虫が好きな様子があれば昆虫図鑑を一緒に見ながら「虫博士だね」などと虫の会話を持ちかけてはどうでしょう。いい部分が少しでも見えれば、そこから掘り下げてその子との関係性をつくっていきます。上手に子どもの興味に寄り添いつつ、やっていいことと悪いことを整理していきましょう。

攻撃的な行動を取っている場面だけで、その子との関係をとらえると苦しくなる一方で、お互いに疲れてしまうばかり。その子自身の気持ちに寄り添い、大人が視点を変えて、違う環境や関係をつくっていくところから始めましょう。


(文・構成 生島典子)

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小野 さとみ

回答者プロフィール小野 さとみ (おの・さとみ)

1962年愛知県生まれ。名古屋市、東京都八王子市や町田市で放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴37年。現在は町田市の放課後児童クラブの支援員。
全国学童保育連絡協議会・副会長、月刊『日本の学童ほいく』編集担当役員を務める。