支援員のお悩み相談室 第52回 入所する子どもの人数が急に増えたときに、するといい対策はありますか?

回答者:池本絵美

2024.02.20
学童クラブへの入所児童数が倍に増え、現在 80人近い児童が通所しています。一人ひとりの子どもを見守ることが難しいと感じることがあり、けんかなどのトラブルや、ケガをするリスクが高まっていて心配です。急に人数が増えた施設で、気をつけることなどはありますか?

出欠確認の方法、居場所の分散、遊び方の工夫など、できる工夫から取り組んでいきましょう。

子どもの出欠は、支援員みんなが分かるホワイトボードを利用

私が勤務している学童クラブも、受け入れ児童数を一気に増やしたことがありました。その際、大規模学童の見学に行き、参考にして取り入れた対処法などをご紹介します。

まず児童数が多い施設で大変なのは、出欠の確認です。大きなホワイトボードに学年別に色分けした名札のような磁石を用意しておき、学童クラブに来たら出席の欄に、休みなら欠席の欄に移動して一目で出欠がわかるようにしておくといいでしょう。「習い事で早帰り」「○時まで延長」など、保護者から電話や連絡帳で受けた個別の予定も書き込んでおきます。支援員が集まって情報共有をするのが難しいときでも、子どもの状況や連絡事項が一目でわかるホワイトボードの出欠管理はとても助かります。

今まで使っていた部屋に、急に人数が増えてしまうと、ほかの人との距離が十分にとれず、パーソナルスペースが侵されてしまいます。子どもたちがイライラしはじめ、集団全体の落ち着きがなくなり、ちょっとしたことでトラブルが起こるようになります。私も人数が増えた当初、けんかをして泣いている子を台所スペースに連れてきて、「落ち着くまでここにいよう」と休ませているときに、そこにも4 人、5人とやってきて対処しきれないことがありました。学童での過ごし方を変えていかないと、支援員の数が多くても解決するのは難しくなります。

子どもが過ごすスペースを分け、人数に合わせた遊びの提案を

厚生労働省の「放課後児童クラブ運営指針」でも「子ども1人につきおおむね1.65㎡以上を確保することが求められる」とあるように、子どもが落ち着いて過ごすためには、子ども同士の距離をとる必要があります。限られたスペースなら、学年ごとに分かれて保育をするなどの対応も考えていきましょう。例えば、低学年と高学年が時間差でおやつタイムをとったり、「高学年は工作、低学年は自由遊び」と遊び方を変えたり、過ごし方やいる場所を分散させるのです。

その際、子どもの様子や状態を見ながら、基本的にそれぞれのグループに支援員が入るようにします。少し配慮が必要な子がいる集団には、担当の支援員がつきます。主任は全体を見渡して、「ここは自分たちで遊べる子が多いから、気になる集団に入ってくれる?」「見えない場所で心配だから、向こうを見てもらえる?」と声をかけて、全体を把握しておきます。

支援員の数が十分でない場合は、遊んでいる場所が分散すると目が届きにくくなることもあります。1つの集団でまとまって遊んでいるほうがトラブルもすぐにわかるので、60人くらいの大人数でもできるドッジボール、20人くらいのサッカー、10人くらいが楽しい鬼ごっこなど、集団遊びの適正な人数やスペースを知っておき、そのとき対応できる支援員の数に合わせて遊びの提案をするといいでしょう。

子どもが自ら行動できるよう、班ごとの仕組みをつくる

班をつくってグループごとに活動させることも有効です。おやつの時間に「好きな場所に自由に座って食べていい」とすると動き回って混乱するので、「班ごとに座り、班長がおやつを配る」と決めておくとまとまりができます。班ごとに当番を決めるのもいいですね。
日替わりで「おやつの後片付けをする」「マンガを片づける」「おもちゃを片づける」など、ホワイトボードに掲示しておきます。最初は慣れないので戸惑うこともあるかもしれませんが、習慣になってくると子ども同士で声をかけ合って行動するようになります。

人数が多いと、支援員は全体を統率するためについ「こうしなさい」とやるべきことを強要しがちです。それが続くと子どものストレスがたまってしまいます。人数など学童クラブに変化があったときは、特に子ども一人ひとりの声に耳を傾けましょう。以前、おやつの時間に「部屋でおやつを食べたくない」という子がいたとき、「おなかがすいたら帰っておいで」と見えるところで遊ばせたことがありました。大勢がいる部屋でトラブルが起きそうなときや、子どもにストレスがたまっているようなら、無理強いせず、ときには臨機応変に個別に見守る対応があってもいいと思います。

急に大人数になって、いちばんストレスを感じるのは子どもです。子どもを管理することばかり考えるのではなく、子どもが楽しく過ごせる場にできるよう、支援員が遊びのスキルを身につけておくと柔軟に対応できます。大変なときこそ支援員間でしっかりミーティングの時間をとって情報を共有しながら、子どもに関わっていきましょう。


(文・構成 生島典子)

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池本絵美

回答者プロフィール池本絵美 (いけもと・えみ)

鳥取県生まれ。鳥取市の放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴 14 年。
鳥取県学童保育連絡協議会では事務局次長として「西日本指導員学校」の運営に携わっている。