支援員のお悩み相談室 第46回 元気がよすぎる3年生が乱暴な行動を取るので困っています。注意をしても効果がありません。

回答者:吉岡 れいこ

2023.07.24

1、2 年生のときに比べて、3 年生になると元気がよすぎて乱暴になる子が見受けられます。そのつど注意はしますが、すぐに元の木阿弥です。力で押さえ込む方法は取らずに、ほかの子ども達への危険も減らしたいのですが、どうすればいいでしょうか。

学童保育でその子がしたいことができているのか、考えてみましょう

自分を振り返らせるような声がけを

3年生になると、1、2年生の経験から身につけた自信だけでなく、実力以上に根拠のない自信を持ってちょっと偉そうにしてしまうところがあるかもしれませんね。「自分で何でもやりたい」という意欲は出てきますが、思ったほど「何でもやれるわけではない」というジレンマがあるのでしょう。

ちょっとやんちゃな3年生が複数人でほかの子を茶化したり、ふざけたりしているのを見かけたら「どうしたん?」と声をかけます。みんなの前で「低学年も(ふざけているところを)見ているよ」と言って、それでも聞かなかったら 1対1で話をします。1年生から付き合ってきた子たちなので、率直に「今の態度はどうやろう?」「相手はどう感じているかな?」「君は(やろうと思ったらちゃんと)できるよね」と、自分の言動を振り返らせるような声かけをします。

暴言を吐いたときや暴力になりかけたときも、自分で考えさせるように促します。子どもが興奮していたり、暴力をふるったりする場合は、ほかの子がケガをしないことを優先してその場では説得せず、その子の感情が落ち着くまで待ちます。周りの子ともめたときは、メモ帳を持って関係している子どもたちに聞き取りに行き、事実確認をしながら「だいたいこんな感じだったのではないか」と背景を探る作業も行います。

時間をおいてクールダウンしてから話しかけるとき、問題になっている話だけではなく、「今日の給食、どうだった?」など、全然違う話をすると心を開いてくれることがあります。一部しか聞きだせなかったとしても、別の指導員が話しかけると自分の感情を話してくれることも。指導員と子どもとの相性もあるので、1人で対応するではなく、指導員同士で連携することが大事です。

高学年は「その子らしさ」を生かす工夫も

「やってはいけないことをやる」「指導員の言うことを聞かない」といった態度をする子は、現状への不満がたまっているのでしょう。「やりたいことができていない」「俺らばっかり・私たちばっかりこんなことをしなくてはならないの」「自分たちが楽しくない」という思いでいると、下級生にもきつくあたってしまいます。「その子のやりたいこと」「その子らしさ」を生かす工夫も必要です。日頃から「君は何をしたいのかな?」と問いかけてみてください。指導員が「これをしよう」と押し付けるのではなく、自分たちで何をしたいのかを考えて、それに取り組めていれば、子どもたちが荒れたりすることも少なくなると思います。

特に 4、5、6 年生になると、学童保育がおもしろくなければすぐにやめてしまう可能性があります。高学年になっても学童を楽しめるように、それぞれの学年ごとに何をやりたいのかを聞いて、企画から取り組むことをおすすめします。最初はうまくいかないかもしれませんが、経験を積んでいくとだんだん自分たちでできるようになります。下の学年の子どもたちもその姿を見て、「自分たちも高学年になったらできるようになる」といういいイメージが持てます。

学童保育を退所したあとは、自分で放課後を過ごす時間配分をしなくてはいけません。その力をつけておいてほしいので、私が勤務する学童保育では、高学年には一定のルール内 で、「遊ぶ時間・宿題をする時間」などを自分で決めさせるようにしています。

小さなことでも見逃さず、意識してほめる

つい問題のある言動が気になり小言を言いがちですが、ほめることも大事です。どんなに小さなことでも、いいところをほめてあげるように心がけていましょう。もし自分で気づけない場合は、仲間の指導員に聞きます。「トイレのスリッパを並べてくれた」「下級生にやさしくしていた」など、その子自身が努力しているところや、ふとしたやさしさの情報をキャッチしたら見逃さずにほめるようにしたいですね。

ほめられても、照れて「ふーん」みたいな感じで受け流すかもしれませんが、子どもにはこちらが見ていることが伝わります。子どもと支援員の信頼関係を築くには、日々これを積み重ねていくことが重要なのです。

何度注意しても聞いてもらえないと、指導員も負のスパイラルに陥りがちです。私も「もっと違う言い方があったかな」「もっとかみ砕いて言えばよかったかな」「もっと冷静になったほうがよかったかな」など試行錯誤をしつつ毎日過ごしています。でも、彼らの長い人生の中で、いずれ「あの時、あんなに言われたけど、やっぱり大事なことだったんだ」と気づいてもらえることを信じて、あきらめずに言い続けていこうと思います。


(文・構成 生島典子)

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吉岡 れいこ

回答者プロフィール吉岡 れいこ (よしおか・れいこ)

兵庫県生まれ。大阪府の放課後児童クラブ支援員として勤務し、支援員歴 15 年。
月刊『日本の学童ほいく』の編集委員を2年間勤めた経験あり。