支援員のお悩み相談室 第45回 支援員は子どもと一緒に遊んだほうがいいのでしょうか? 子どもの遊びにどう関わっていけばいいのか悩んでいます。

回答者:田嶌 大樹

2023.06.21

最近、勤務先の学童を変えました。以前の学童は支援員が子どもと一緒に遊んではいけなくて、子ども同士で遊ぶことを促していました。現在の学童は支援員が子どもと一緒に遊ぶことが多く、大人が遊びに夢中になったり、一人の子に独占されたりして、ほかの子の見守りがおろそかになっていると感じるときがあります。子どもの遊びにどう関わるのがいいのでしょうか。また、学童でお勧めの遊び方があれば教えてほしいです。

「放課後に大人がいる」ということが学童の良さ。それぞれの現場に合ったやり方で、大人も遊びに参加できるよう工夫してみましょう。

支援員や子どもの人数に合わせて、関わり方のレパートリーを増やす

学童の遊びには2つの特徴があります。ひとつは「放課後に大人がいる」こと。もうひとつが「空間の中に遊びが乱立している」ことです。大人はどうしても遊びから一歩ひいて見守ったり、管理的に上から目線になったりしがちですが、せっかく大人と過ごすチャンスがあるのですから、ぜひ一緒に遊ぶ時間を大事にしてほしいです。

子どもにとって自分と違う体格で、違う動きをする人と遊ぶこと自体がおもしろさにつながりますし、遊びに熱中する大人との関わりはとても貴重な体験です。とはいえ、人員が豊富に配置できなくて、グループごとの遊びすべてに関われない学童もあるでしょう。そういう場合は「全体を見守る人」「一緒に遊ぶ人」など、支援員同士のフォーメーションの工夫があるといいですね。

ひとつの遊びの輪に最初から最後まで付き合う必要はないので、関わり方のレパートリーを増やしてみるのも手です。普段は全体の遊びを見守りながら、隙を見てサッカーの輪に入ってドリブルをしてさっと抜ける。踊っている子どもに「うまいね、次はもっと体を反ってみる?」と声かけのフィードバックをする。みんなが参加する季節のイベントは思いっきり一緒に遊ぶ、など。子どもの遊びの世界を尊重しながら、乱立する遊びに関わっていく感じです。

危険なことへの注意喚起も、外から管理的に「あれだめ、これだめ」と言うより、一緒に遊びびながら「危ないからやめよう」と言うほうが伝わることがあります。子どもは支援員がひとつのグループだけにいられないことをよく理解しています。それぞれの現場で支援員や子どもの人数に合わせながら、何かしらの形で子どもの遊びに関わっていく方法を探ってみてください。

使い方の決まっていない、“余白のある”道具が遊びを創造する

学童の遊び方でお勧めしたいのは、けん玉やホッピングのように遊び方がある程度決まっているものだけでなく、使い方に “余白のある道具“をさりげなく置いておくことです。 例えば、机に新聞紙やポリ袋、セロハンテープを置いておくと、ボールを作ってパスしたり、新聞紙を細く丸めて組み立てたりし始めます。普段は色えんぴつやはさみ、のりがセットされている道具箱のなかに、紙コップや輪ゴム、毛糸、磁石などいつもと違うものを入れておくと、しかけのあるおもちゃを作り出すことも。あれこれ試行錯誤しているうちに、大人が思いつかないような遊び方が生まれます。

何もないと触発されないのですが、自由に使える道具が複数あると、「おもしろい使い方ができないか」「組み合わせたら何ができるか」と考えるのです。子どもには道具をおもちゃに見立てるすごい力があります。大人は「そうやって使う物ではない」と言いそうになるのをガマンして、子どもの創造力を見守りましょう。

学童は、バリエーションのある遊びを体験できる貴重な場

先に述べたように「空間の中に遊びが乱立している」ことが学童の遊びの特徴であり、大事にしたいポイントです。普通の公園で過ごすとき、それぞれの集団同士が交わることはあまりありませんが、学童では集団ごとにやりたい遊びをしているものの、普段から共に過ごす仲間なので遊びや人が交わることがあります。

おままごとをしていた子がピアノの音色に引き寄せられたり、ブロック遊びをしていた子が鬼ごっこの輪に交ぜてもらったり、どんどん遊びが切り替わっていきます。楽しそうな音、声、見た目などに引き寄せられて、思いがけない出会いが起こり、想定していなかった新しい世界の広がりを生み出すのです。

学童は何をやってもいい場所だからこそ、ほかの人との関係性を築けないとうまくいきません。サッカーに交ぜてもらいたければ、交ぜてもらえるような関係性をつくることが試されます。やりたいことをするためには交渉力も必要です。コミュニケーションが苦手な子がいれば支援員がサポートをし、遊びながら成長していく子どもを支えていきましょう。


(文・構成 米原晶子)

★「支援員のお悩み相談室」で聞きたいことを大募集!★
子育て支援の専門家がおこたえします。コラムへのご意見、ご感想もお寄せください。
・支援員の方はこちら
・保護者の方はこちら

田嶌 大樹

回答者プロフィール田嶌 大樹 (たじま・ひろき)

東京学芸大学 児童・生徒支援連携コンソーシアム特命助教
専門は「あそび」を核にしたスポーツ・教育実践研究。現在は、放課後児童クラブにおける遊びの研究、企業や地域の大人と大学生・子どもを巻き込んだ学校外教育フィールドの開発、運動遊びを通じて子どもの能力を高めるプログラムの開発などに取り組む。学校教員研修や放課後児童クラブ支援員向け講座などの講師も務め、その活動は多岐にわたる。
著書『子どもの貧困とチームアプローチ “見えない” “見えにくい”を乗り越えるために』(共著・松田恵示監修/書肆クラルテ)では、大学生が社会課題の解決を目指して教育実践をしながら学ぶ「サービスラーニング」について論じている。

Facebook: https://www.facebook.com/fy.rlough.argmm