支援員のお悩み相談室 第29回 転校してきて、友達の輪に入れない子がいます。みんなの輪に入れるように、どんな声かけをしたらいいでしょうか。

回答者: 高橋 誠

2021.12.17

年度の途中で学童保育に入ってきた転校生がいます。なかなか友達の輪に入れないようで、いつも一人でいて寂しそうです。みんなと仲よくなるためには、どのような声かけをすればいいでしょうか。

まず、子どもを理解すること、信頼関係をつくることに努めましょう。遊びの輪に入っていくタイミングは、子ども自身が見極めます。

 

まずは子どもを理解するために寄り添い、見守る

学童保育には、いろいろな子どもがいます。「友達の輪に入れず一人で寂しそうにしている」というのは、あくまでこちらが見ている印象にすぎません。声をかけるなど何らかの橋渡しをする前に、いくつか確認すべきステップをみてみましょう。

年度途中で転校生として学童保育に来るようになった子は、そこがどんな場所かまだわからず、不安に感じているでしょう。そんな状態でいきなり友達の輪に入っていくのは、とてもハードルが高いと思います。入ったばかりのころは、その子の普段の様子を指導員・支援員側も理解できておらず、子ども自身もこの学童保育の様子がわかっていません。お互いに手探りの状況です。

まずは、子どもに寄り添い見守ることで、その子どもへの理解を深めます。漫画やブロックなど、その子が過ごしている様子から「○○が好きなの?」と声をかけて、会話の中から子どもの気持ちを探ることができます。声かけに返事がないときは、しばらく黙って様子を見守りましょう。その子どものことを気にかけ、理解することをかかわりの基本に据えるといいですね。

一緒に遊ぶことで信頼関係をつくる

頃合いを見計らって、「○○やってみない?」と遊びに誘ってみましょう。指導員・支援員がその子の「遊び相手」になるのです。この場合、オセロなど一対一の遊びのほうがいいように思います。複数人による遊びの場合、遊びの流れをほかの子どもがつくってしまい、肝心の子が抜けてしまうことがあるからです。一緒に遊ぶことで、心を開いてくれるようになってくれればうれしいですね。

少しずつその子と指導員・支援員との遊びに、ほかの子どもたちが加わる場面をつくっていきます。遊びに興味を示して、「入れて」と声をかけてくれる子もいたら、当人の同意を得たうえで一緒に遊びます。さらに、「一緒に○○やってみない?」と、遊びの輪に周囲の子を誘ってみるのもいいでしょう。このように、指導員・支援員が子ども同士のつながりの「橋渡し」をすることはとても大切なことです。

 

遊びの輪に誘うとき気をつけたいこと

一人で過ごしていることが多い子を見ると「友達と何かあったのかな?」「一人で寂しくないのかな?」と心配になります。しかし、「じっくりと漫画を読みたい」「ずっと折り紙を折っていたい」など、一人で過ごすことがその子どもの意思なら、それを尊重する必要があります。また、一人でいたい子を遊びの輪に誘うことが、適切なのかを考えることも大切です。

たとえば、友達がドッジボールをしている様子をじっと見ている子は、「興味があるんだろう」ということはわかります。そのとき「一緒にやらない?」と声をかけるのは一般的かもしれませんが、声をかけることで、その子が「自分にもできそうかな?」と様子をうかがっている行為を阻害してしまう可能性もあるのです。

以前、同じような状況でサッカーをずっと見ている子に、私が「一緒にやらない?」と声をかけたら、その場からいなくなったということがありました。でも、その子はあるときサッカーの審判が持つイエローカードやレッドカードを自分で用意し、「オレ、審判やる」と仲間に入り、みんなと一緒にプレーを始めたのです。彼は自分が入るチャンスをじっとうかがっていたのです。このように、子どもには子ども自身がタイミングを見極めていることもあるのです。

指導員・支援員が「こうしたほうがいいな」「こうなったほうがいいな」と思うことをすぐ言葉にしたり、行動に移したりするほうが楽ですが、グッとこらえて待つことも大事です。「待つ」には忍耐が必要で、結果が指導員・支援員が思い描いたようにはならないこともあります。だからこそ、その子どもの思いに寄り添うことが大切なのです。根気のいることだからこそ、子どもを見守るときには職員間で気づいたことを話し合い、どういった対応や関わり方がよかったのかなどを振り返りながら、情報を共有し、確かめていく必要があります。


(文・構成 生島典子)

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 高橋 誠

回答者プロフィール 高橋 誠 (たかはし・まこと)

1968年、東京都生まれ。91年に東京23区に入区し、現在、区内児童館長(放課後児童クラブ担当兼務)。指導員歴は30年。東京都放課後児童支援員認定資格研修および資質向上研修の講師を務める。白梅学園大学非常勤講師および全国学童保育連絡協議会事務局長。